湿っぽい日本の朝が懐かしいと思ったのはいつだっただろうか。はっきりと分からないほどそれは昔になっているらしい。二人として都合のいい国で暮らし始めてもう三年にもなる。カイトの腕の中のキジーはとろとろと夢と現実の境を彷徨っていて、そのくせ袖を握りこんだまま離さない。慣れ切った朝のひとときを二度寝できないままカイトは過ごす。
一度目が冴えてしまえばもう眠れない。その所為で昔は夜の散歩に出ることが多かった。最近はキジーを抱いて眠ることが多いからか目が覚めるのは日が出てからになる。
カテゴリー: 高低
「HiGH & LOW」シリーズより、カイキジ、ダンテツ、ニカナオ中心
紅
くれない /紅
あと十分もすれば出発である、そんな時にキジーは化粧を直している。どうせヘルメットを被れば落ちてしまうだろうに目元をじっくりと作りこんで、そうして二度手を鳴らしてカウンターチェアごとぐるりと回ってこちらへと体を向けた。
「カイト、仕上げお願い」
「……は?」
「口紅、ほらこれ。筆はこれね」
ひどく動揺する自分とは対照的に、淡々と何事もないかのようにキジーは見覚えのある筆と見覚えのある化粧品を差し出した。ほらちゃんともって、と筆を握らされ、ご丁寧にキャップを外してくるくると回してから左手に口紅が収まる。
「ちゃんとやってね」