ぴちゃん、ぴちゃんと狭い室内に水音が響く。あとで締めなあかんなあと頭の片隅に放り込んで、肌という肌に泡をまとったテッツを見上げた。ドレッドってシャンプーめんどくさそうやなあ、はよ切ったらええやん。苦情を飲み込んで丁寧に頭を洗っているテッツに「イケメンやなあ」と告げると「気のせいでしょ」と冷たい返事が降ってきた。
カテゴリー: 高低
「HiGH & LOW」シリーズより、カイキジ、ダンテツ、ニカナオ中心
ひとりの夜のひとりよがり
網戸すらない安い仮家に住んでいる。クーラーが効くまで、と開け放したままだった窓は、かれこれ五時間はそのままになっていた。涼しいというより冷たい風が入り込むようになってきた。あの人今何してんだろ。部屋に時計がないせいで時間すらわからない。スマホで時間を確認して、今頃は店仕舞いの準備だろうと当たりを付けた。だからと言って何をするでもない。出来ることなんて数えるほどしかなかった。
無力感に襲われて、座り込んでいた姿勢を倒した。縦長の四角い枠に暗い夜空が広がる。星が一つも見えない黒海に、ぽつりと黄色の舟が浮かんでいた。ぼんやりと光の影が月の形を象っている。綺麗だなあと持ったままだったスマホのカメラを外へ向けた。窓枠が入り込まないようにズームしていけば夜景はすぐにぼやける。人間の視界がそのまま残ればいいのに。輪郭と影が一緒くたになったいびつな丸い光と四つ向こうの通りにあるマンションをどうにか保存した。
たとえば
shorts#ダンテツ
ここにサインをお願いします。
貴方のカイキジ本は「君の笑顔を見るたびに、好きの想いが増えていく。」から始まり、タイトルは『ここにサインをお願いします。』、煽りは【俺を選んでくれてありがとう】です。
#BL本のタイトルと煽りと出だし
https://shindanmaker.com/693751
結婚しよう、キジー。
2017/3/10
goldBB
「キジー、バレンタインだけど」
「ああ、ごめん今年渡せそうにないから忘れて頂戴」
「分かった」
そんな会話から、十日ほどたった朝のおはなし。
カナリヤ
幸せの青い鳥
嗚呼、今幸せなのか。ふと至った結論があまりにも衝撃的だったせいで立ち止まる。いきなりの静止に腕を組んだままだったキジーがつんのめった。ええ、なによもう、と条件反射のように口をついた文句とともに振り返って、はた、とキジーの表情が一変した。なに、どうしたの。繰り返された言葉はトーンが違う。何よにやにやしちゃって。続いた言葉と心配そうな顔がかみ合わない。
あいうえお作文「ま行」
「枕」
無口な恋人との同棲を始めてからまず最初に行ったのは、不健康な生活の改善だった。食事は一日に一食は当たり前で、酷ければ何も考えずに抜いてしまう。そんな生活でよくもこう大きくなったものだと思うけれど、その分体に厚みがないから収支は釣り合っているかもしれない。
黒い海
幸せとは、他人には定義できないものである。幸せを求めて、母とも姉ともつかぬ面影の女を失って以来、幸せというものがわからない。父の形をしていないということだけは分かっているけれど、カイトとキジーの語る幸せというものは、なおさら理解ができなかった。
二人は決して手を取ることなく、目を見て動く。達者な口、寡黙な男、かみ合うようでかみ合わない二人がそれでも共にいるのは、どこか根本が同じだからなのだと思っていた。
「……っとう、に。お前らは面倒だな」
「あんたには関係ないでしょ」
暫くここ、空けるから。一人でせいぜい頑張りなさい。朦朧としたカイトを引きずって出ていくキジーを見送りながら、ひとまず一服することにした。あんなものを見ちゃ正気でいるのも一苦労だ。